道路・交通に関するコンサルタント業務ノート

道路・交通関連の設計やコンサルタント業務にまつわるノウハウメモ&レポート

「早い」「安い」「うまい」渋滞対策の考え方

1.渋滞対策の種類

 一口に「渋滞対策」といっても、その種類は様々です。

 渋滞は、交通容量に対して交通需要が超過している状態になったときに発生します。

 容量側を増やす方法としては、「バイパスなど新しい道路を作る」「車線を増やす」「立体交差」などいわゆるハード対策があります

 逆に需要減らす方法として「バス、電車など公共交通に転換」「時差出勤」「交通情報提供」など、いわゆる「交通需要マネジメント(TDM)」という考え方があります。前者のハード対策に対してソフト施策とよばれたりします。

 高度成長期やバブルのときは、経済活動に道路は必要不可欠なものとして、また将来的にも自動車交通需要は増加していくことが前提でしたので、あまり深く考えないで、とにかく道路整備を進めていこう。「渋滞している。混雑している」→「道路が必要」という思考で十分理解が得られる時代でした。

 人口減少が確実とされる現代では、「渋滞対策」=「新規道路整備」という図式は成り立たない時代となっています。

 仮に対策メニューとして「新規道路整備」が必要となった場合でも、実際のところ道路が完成するのは早くて10年後、20年後なので、道路利用者側から見れば、あまり意味がない対策です。

 一方「交通需要マネジメント(TDM)」などのソフト施策は、比較的安価に実施できて、また試行錯誤(やりなおし)もできるという点でも、合理的な手段です。ただ、対策としては「広く」「浅く」なので、「施策」と「効果」の因果関係がわかりづらいところがあります。

 ひらたく言うと、行政(道路管理者、交通管理者)側の苦労の割には、いまいち評価がされにくいというジレンマがあります。

2.渋滞の原因は「交差点」

 そこで比較的、安価、速効、わかりやすい対策として「交差点改良」があげられます。

 以前、記事にしましたが一般道路の渋滞要因(ボトルネック)はほとんど「交差点」です。なにせ一日の半分は通行できない(信号の青時間比率が50%の場合)のですから当然です。それで交差点部分は「右折レーン」「左折レーン」など車線を付加して容量を増加させる構造としているわけです。このあたりは「道路構造令」にある通りで、道路設計者は「道路構造令」にならって設計していくわけですね。

 ただ需要を見込んで設計整備した交差点でも、渋滞が発生(渋滞の先頭)している場合があります。交差点は単路部と違って右左折交通、歩行者が混在してる箇所ですから、様々な要因で容量低下が生じている場合があり、改良の余地がある場合がほとんどです。

 それで、渋滞対策として「交差点改良」があり、大規模な道路整備ではなく、ちょっとした工夫で効果が・・という、まずまずキャッチーな施策となるわけです。しかも局所的なハード整備ですから効果の計測もしやすいという利点があり、行政側としても達成感が得られる施策といえます。

3.交差点改良コンサルティングのポイント

〇信号現示改良(青時間比率の最適化)は下の下の策 

 よく対策検討で「信号現示の変更」として「」という項目を目にしますが、仮に私が「道路管理者(国、都道府県、市町村)」側からの発注業務で検討するときはでは基本「禁じ手」にしています。

 「青時間比率の最適化」とは、いわゆる交差点需要率計算をして、実測交通量に合わせて現況の青時間比率の最適化を提案するものです。

 ただ、ほとんどの信号は、交通管理者(警察)によって、系統的システマチックに最適化されている、あるいはルーチンワークで適宜改良されているので、「道路管理者(国、都道府県、市町村)」側からの提案としては、釈迦に説法というところとなります。

 渋滞対策としては当然「交通管理者(警察)」と連携しますが、図式としては「道路管理者」が構造的な改良を提案・整備→「交通管理者(警察)」が信号を最適化、という原則を念頭に置いておく必要があります。

〇速度低下要因を見つける

 「速度低下」=「容量低下」です。もし、車両が連結されている電車のように一定の車間距離、速度で通行できていれば、容量低下は生じてないことになります。要は交差点の処理能力、つまり設計通りのパフォーマンスが発揮されているわけです。

 実際はそんなことはなく、交差点の流入部で観察すると、青信号で交差点通過の際、ちょいちょいブレーキランプが点灯しています。

 「ブレーキ」=「速度低下」=「容量低下」です。私の場合、まず現地では「青時間中にブレーキランプがどこで、どの程度点灯しているか」→「その原因はなにか」を観察することとしています。

〇見落としがちな改良点

 さて「ブレーキランプ点灯(速度低下)」が生じていている箇所・原因の目星がつけば対策を検討います。

 よくある「原因」→「改良点」としては

  • 〇「右折レーン長の不足」→「右折レーン延伸」
  • 〇「左折車が多い」→「左折レーンの設置」
  • 〇「交差点内での蛇行、不規則停止」→「導流線(交差点内の右折車両導流・停止線)の設置」

 などがあげられます。

 このあたりは、定番となる対策なので、観察時も着目しておくことが必要です。逆に見落としていると、コンサル能力を疑わられます(笑)

 そのほかに、見落としがちな改良点としては、下記のものがあります。

 

  • 幅員の不足。以外と3.0m未満となっている場合があります。
  • 左折車両と横断歩行者による阻害。交差点設計時に織り込んで計算されていますが、意外と現地では横断歩行者でまったく左折できない場合が生じている場合があります。
  • 交差点手前の街路への左折(信号を避けて)が多い
  • 交差点付近の沿道施設への出入り車両
  • 交差点が大きい場合。一般には交差点は小さいほうが処理能力として有利とされています。
  • バス停

 

と、いろいろありますが、文献としては下記のものがありますので、参考としてください。

交差点改良のキーポイント

交差点改良のキーポイント

 

 

 交差点の渋滞要因は、一見すると突発的、軽微なもので、業務の文脈次第では「これは警備であり渋滞要因ではない」とするときも正直ありますが、実際は軽微な要因の累積が渋滞となっていることはいうまでもありません。

ネクストブレイクは飯田市 ラウンドアバウトで決まり 交通工学的に・・・です。

最近、長野県飯田市に関する仕事をしたので、飯田市の関する話題を。

交差点渋滞の切り札-ラウンドアバウト-

道路交通を勉強している人はご存知かと思いますが、ここ最近ラウンドアバウトの取り組みが始まっています。

ラウンドアバウトとは信号のない環状型交差点です。

ラウンドアバウト - Wikipedia

信号がないので、余計な停止がない分効率的な交通が処理できます。反面、整備面積が大きかったり、優先、非優先があいまいだと事故になるのではという指摘もあります。

欧米では一般的で、日本ではイギリス本で有名なリンボウ先生こと林望氏が最小に紹介したような記憶が。

 

ホルムヘッドの謎

ホルムヘッドの謎

 

 飯田市ではラウンドアバウトが2つある

さて、飯田市ですが、ラウンドアバウトが2箇所整備されていて、下記のサミットなるものの開催されています。

「ラウンドアバウトサミットin飯田」を開催しました - 飯田市ホームページ

 

社会実験の現場となって「吾妻町交差点」その後整備「東和町交差点」2箇所があるということでグーグルマップでみると

結構市街地に作ってます。飯田駅前です。

えー二つありますね。右側が「吾妻町交差点」左側が新規整備の「東和町交差点」のようです。隣接しているのですね。

 

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 実際に走行している映像がありました。


ラウンドアバウトをハシゴ【長野県飯田市東和町交差点-吾妻町交差点】 - YouTube

 

最初の「東和交差点」はあまり交通量は多くないですね。続いて「吾妻町」はローターリーを走っている車両もあったり、歩行者も渡っています。

確かに、信号待ちのストレスは無いですね。

・・・とついでにこんな映像をみつけたのて゛


【車】世界一複雑な環状交差点 マジック ラウンド アバウト Roundabout Traffic - YouTube

・・・・これを整備した勇気に敬服します。

 

そんなわけで飯田市ですが・・・

ラウンドアバウトのほか、飯田市はリニア駅も整備される予定。また中央自動車道の飯田インター~松川インターにはスマートインターができるというニュースも。

ラウンドアバウト」「リニア駅」「スマートインターチェンジ」と交通技術者的には垂涎の的、聖地といえます・・・・ってか。

 

 

 

 

 

 

 

その道路、24時間のうち12時間は車両通行止めです。

その道路は24時間のうち12時間は車両通行止め・・・って、ほとんどの道路は信号機があるので、24時間中12時間ぐらいは赤信号で通行できないということです。

信号機は大体は90秒~180秒で一回転します。これをサイクル長といいます。

次に信号灯による通行パターンを「現示」といいます。もっとも単純な信号ですと、主道路が青のときと従道路が青の2パターンですので「2現示」となります。この基本から途中で矢印信号で右折車両をさせると、主道路青」→「右折矢印」→「従道路青」→「右折矢印」であれば「4現示」となります。

冒頭の「24時間中12時間は通行止め」というのは、通行可能として割り当てられている青時間はサイクル長の50%程度なので、実質半分は通行止めということです。

感応式信号機って、けっこう罪つくり

ほとんどの信号は、あらかじめ設定されたプログラムや管制制御で、ドライバーの意思に関係なく勝手に動いてるのだけれだも、交通量の少ない流入路では「感応式信号機」が設置されている。

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普段は赤だけど、車両がきたときだけ青になるアレです。交通量は少ないが、かといって信号が無しでは危ない流入部に設置されていています。ほとんどの場合停止線の上にセンサーがあり停止線に車両が止まると感応する仕組みです。横断歩道がある場合は歩行者用の押しボタンが併設されています。

近所にも一機設置されていて、コレが当家と直近駅の経路にある。私はあまり経験が無いのですが、うちの奥さんは時々「また、信号思いっきり待たされた。」と憤慨して帰ってきます。

もちろん信号機には「感応式」と表示されています。また感応すると「感応中」のランプが点滅して、ドライバーに教えてくれるようにはなっています。

まれに(奥さんに言わせるとしょっちゅう)、知らない、あるいは気がつかないドライバーがいるようです。

感応式は感応しない限りは永久に赤です。奥さんとしてはクラクション鳴らすのも抵抗があるし、かといってわざわざ降りて注意するのも怖い。歩行者用のボタンを押しに行こうとも思うのですが、途中で気づく可能性もあるし、また当のドライバーがそれと気づかずに青で発進されると「その青は、私がわざわざクルマから降りてボタンを押した青だぞー!!」という気分になるのでしないそうです。

ご高齢のおばあちゃんやおじいちゃんならまだしも、おっさんだと殺意すら覚えるそうです。

いやー、感応式信号機って怖いですね。私も気をつけようっと。

渋滞発生メカニズムと車間時間2秒

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渋滞発生のメカニズム

かなり有名になっているかもしれないけど、NEXCO東日本のサイトでは、渋滞発生のメカニズムを分かりやすく動画で解説してます。

サグ部などで起きる「渋滞」の原因とその対策について | 道路交通情報 | ドラぷら

渋滞発生のメカニズム(NEXCO東日本)

渋滞の原因は事故とか工事などによる車線減少などによる容量低下、また一般道では信号交差点での容量不足などがありますが、ここで説明されているのはいわゆる「自然渋滞」の説明です。

ドライバーの方ならよく経験していると思いますが、普通に走っていたら急にノロノロ運転になって、工事でもしてるのかと思ったら特になにもないという現象です。「先頭のクルマにやってんだ(怒)」・・・というアレです。

で、NEXCOの解説にもありますが、まさしく「先頭のクルマ」に原因があることが分かります。

たとえば、一定数の車両が時速80km/hで走行しているとします。すべての車両が時速80km/hをキープしてれば、当然渋滞は発生しません。しかし先頭の車両が何らかの原因で速度が低下。すると後続車は当然車間距離が縮まるので「やばっ」と思って速度を落とします。

このとき後続車両は車間距離をキープしたいので、前方車両より速度を落とす必要があります。つまりは前方の車両が75km/hになったら、後続車両はより 遅い、たとえば65km/hに速度を落とします。するとその次の車両は65km/hより遅く、でまたその次の車両はもっと遅く・・・となって、速度は 0km/hに近づき渋滞が発生します。

NEXCOのホームページでは、速度低下しやすい区間としてサグ(下り坂から上り坂にさしかかる凹部)での事例を紹介していますが、他にトンネルの明暗によるの、看板なども。

よく「美人渋滞」なんてことを言いますが、思わぬものが渋滞のきっかけとなっています。ただし、渋滞に遭遇した後続車が渋滞を通過するころには「美人」は立ち去ったあとです。

車間時間を2秒

このような、自然渋滞の発生を防ぐには、当然サグ部等での無意識の減速や不用のブレーキを なるべくしないことが肝心ですが、「渋滞学」で有名な、東京大学の西成 活裕教授は渋滞を減らす運転方法として「混んでも詰めない。車間時間2秒。」を提唱しています。

マナーを学ぼう MUJICOLOGY!研究所 | 生態にみる渋滞

2秒の論拠としては、いろいろと理論的背景はあろうかと思います。詳しくは西成教授の著作なりを読んでいただくとして、われわれ交通工学をかじった者にとっては確かに2秒という時間は「ああ2秒。やっぱしそこらへんですか。」と結構腑に落ちる時間です。

以前、当ブログでも書いたように、

「道路の交通容量」によれば、基本交通容量が定義されており、まず単路部の2方向2車線道路で2500pcu/時/2車線、次に 多車線道路及び1方向道路の基本交通容量で2200pcu/時/車線となっている。

 道路の交通容量とは当該道路で処理することができる台数ですが、ここで2200pcuとは乗用車(小型車)換算台数です。実際の交通では大型車が10パーセント程度はあるので、実際には2000台/時間/車線ぐらいが交通容量となります。

1時間に2000台ということは、3600秒÷2000台=1.8秒。つまり概ね2秒に1台、交通を処理できるということです。

逆に考えれば2秒に1台通過している状態が、その道路の最大パフォーマンスを実現している環境であると言うことができます。

渋滞と経済

さてさて、渋滞という概念はいろいろな社会現象にもロジックとしてあてはめられそうで、id:prof_nemuroさんのブログでは、渋滞を日本経済にあてはめて下記ようにコメントされています。

このロジックを経済全体に適用してみましょう。1998年から企業部門資金余剰を続けていますが、その裏返しが家計所得の伸び悩みと財政赤字です。企業 部門がマネーを貯めこんでいる、すなわちマネーを渋滞させていることが、経済全体の成長率低下を引き起こしていると言えます。ならば、日本経済全体の利益の名のもとに、政府が企業部門に賃上げを働きかけることや、再分配を強化してマネーの偏在を解消することも正当化されるはずです。

 

渋滞学と日本の最適化 - Think outside the box

 

お金に関しては、人間のエゴが最大限に発揮されそうで、ワザと渋滞を発生させて、自分だけはスタコラ逃げてしまう人も多そうです。

渋滞学検定

上記のマナーを学ぼう「 MUJICOLOGY!研究所サイト」では「渋滞学検定」なるものも用意されています(10問)。私は9問正解でした。一番肝心な第4問を間違えました(^┰^)ゞ テヘヘ))

マナーを学ぼう MUJICOLOGY!研究所 |渋滞学検定

 

福岡市では深夜にゴミ収集してるって知ってました?

ゴミは全国どこでも、朝収集しているものだと思っていたら、福岡市では深夜に収集していることを今日知った。

渋滞要因分析&対策検討の仕事をしているとき、話のネタとして「やたら水曜日の朝に渋滞するなと思ったら、ゴミ収集の日だったりするんですよ。」なんてことをさもありなんと語っていたのだが、福岡でしゃべらなくて良かった。

id:daibutsudaさんのブログによれば、深夜22時ごろから回収が始まるらしい。

福岡では夜にゴミを出す - だいぶつのブログ

福岡市も問い合わせが多いのか、わざわざ市ホームページに「夜間収集の歴史」という記事を掲載している。歴史的経緯を経て本格的に始まったのは昭和32年とのことだから、かなり昔から実施しているようだ。

福岡市 夜間収集の歴史

文脈としては、朝の渋滞を避けて効率的にゴミ収集ということだが、実はゴミ収集車自体が渋滞発生原因あるいは渋滞を助長していることもある。

ゴミ収集を朝ピーク時から深夜にシフトすることで、交通ピーク時の交通量分散、また大型車(ゴミ収集車)の影響緩和にもなり、渋滞対策として有効だと思う。

メリット、デメリットはいろいろある思うが、交通渋滞緩和の観点からは良い施策だ。

最後の警告-道路の老朽化対策の本格実施 に関する提言-

1.最初に

「最後の警告-今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ」

  • 「静かに危機は進行している」
  • 「すでに警鐘は鳴らされている」
  • 「行動を起こす最後の機会は今」

上記は平成26年4月14日に、国交省所管の「社会資本整備審議会 道路分科会」の提言「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」の序章の見出しタイトルです。

道路:道路の老朽化対策の本格実施に関する提言 - 国土交通省

 

国交省というお役所から出された資料の文言としてはドラスティックで挑発的です。

道路インフラについては数年前から、長引く不況から無駄な道路整備より維持管理の時代という認識でしたが、この提言では現在でも全然本格的に実施されていないことが示されています。

以下に序章を抜粋します。

管理責任者にとどまらず国民も含めて社会全体が無関心

デフレが進行する社会情勢や財政事情を反映して、その後の社会の動きはこの警告に逆行するものとなっている。即ち、平成17 年の道路関係四公団民営化に際しては高速道路の管理費が約30%削減され、平成21年の事業仕分けでは直轄国道の維持管理費を10~20%削減することが結論とされた。そして、社会全体がインフラのメンテナンスに関心を示さないまま、時間が過ぎていった。国民も、管理責任のある地方自治体の長も、まだ橋はずっとこのままであると思っているのだろうか。

米国「カトリーナ」台風被災を反面教師に。

2005 年8 月、米国ニューオーリンズを巨大ハリケーン「カトリーナ」が襲い、甚大な被害の様子が世界に報道された。実はこの災害は早くから想定されていた。ニューオーリンズの巨大ハリケーンによる危険性は、何年も前から専門家によって政府に警告され、前年にも連邦緊急事態管理庁FEMA)の災害研究で、その危険性は明確に指摘されていたのである。にもかかわらず投資は実行されず、死者1330 人、被災世帯250 万という巨大な被害を出している。「来るかもしれないし、すぐには来ないかもしれない」という不確実な状況の中で、現在の資源を将来の安全に投資する決断ができなかったこの例を反面教師としなければならない。

 可能性のあることは必ず起こる。

橋やトンネルも「壊れるかもしれないし、すぐには壊れないかもしれない」という感覚があるのではないだろうか。地方公共団体の長や行政も「まさか自分の任期中は…」という感覚はないだろうか。しかし、私たちは東日本大震災で経験したではないか。千年に一度だろうが、可能性のあることは必ず起こると。笹子トンネル事故で、すでに警鐘は鳴らされているのだ。

  道路先進国アメリカが直面した「荒廃するアメリカ」

1920 年代から幹線道路網を整備した米国は、1980 年代に入ると各地で橋や道路が壊れ使用不能になる「荒廃するアメリカ」といわれる事態に直面した。インフラ予算を削減し続けた結果である。連邦政府はその後急ピッチで予算を増やし改善に努めている。それらの改善された社会インフラは、その後の米国の発展を支え続けている。

「荒廃するニッポン」が始まる前に

日本社会が置かれている状況は、1980 年代の米国同様、危機が危険に、危険が崩壊に発展しかねないレベルまで達している。「笹子の警鐘」を確かな教訓とし、「荒廃するニッポン」が始まる前に、一刻も早く本格的なメンテナンス体制を構築しなければならない。
そのために国は、「道路管理者に対して厳しく点検を義務化」し、「産学官の予算・人材・技術のリソースをすべて投入する総力戦の体制を構築」し、「政治、報道機関、世論の理解と支持を得る努力」を実行するよう提言する。

 以下、「道路インフラの現状」「課題」「取り組みの方向性」「具体的な取り組み」と続きます。

 

2.道路インフラの現状

  • 全国に約70 万橋、道路トンネルは約1万本存在。
  • 全国約70 万橋の橋梁のうち、7割以上となる約50 万橋が市町村道にあり、大部分は地方公共団体が管理するものである。
  • 高度経済成長期以降に集中的に整備した橋梁やトンネルが、今後急速に高齢化し、10 年後には建設後50 年経過する橋梁が4割以上になると見込まれている。
  • トンネルにおけるコンクリート片落下や道路照明柱の腐食による転倒事故等も毎年のように発生している。
  • 東京オリンピック大阪万博等に間に合わせるため、緊急的に整備された箇所や、沿岸部、水中部など立地環境の厳しい場所などでは、近年、一部の施設で老朽化による変状が顕在化している。
  • 日本は歴史的に木で橋を建設してきており、洪水による流出、火災などにより架け替えを行うことが普通であった。
  • 鉄・コンクリートでの橋の整備が本格化したのは昭和30 年前後であり、それらは「永久橋」と呼ばれ、鋼橋は塗装の塗り替えのみで良く、メンテナンス・フリーと考えられていたことから、その維持管理の必要性が十分認識されていなかった。

3.老朽化対策の課題

【予算】

  • 直轄国道の維持修繕予算は最近10 年間で約2割減少している。直轄国道の維持修繕予算 平成16 年度当初予算:3,202 億円→ 平成25 年度当初予算:2,515 億円
  • 財政的な厳しさから、市区町村の約7割が新規投資が困難になることに加え、約9割が老朽化対策に係る予算不足による安全性への支障発生についての懸念を示している。

【体制】

  • 町の約5割、村の約7割で橋梁保全業務に携わっている土木技術者が存在しない。
  • さらに、地方公共団体の橋梁点検要領では、遠望目視による点検も多く(約8割)、点検の質にも課題がある。
    橋梁保全業務に携わる技術者数が0人:(町)約5割、(村)約7割
    ・橋梁点検要領に点検方法として遠望目視を定めている都道府県・政令市:約8割
  • 地方公共団体が管理する橋梁の約半数は建設年度が不明で、「道路台帳(橋調書)の作成が不十分」「橋梁設計図書を保存・管理していない道路管理者も多数存在」とも指摘されている。
  • 不測の事態が生じた場合に第三者被害等が重大となる高速道路の跨道橋について、交通量が少ない等の理由から、各道路管理者における維持管理の優先度が低く、点検が実施されていないものがある。 ・高速道路を跨ぐ橋梁を未点検又は点検不明地方公共団体:約140 橋/約3,300 橋

【メンテナンス産業】

  • 修繕工事は新設工事と比べて手間がかかり、人件費や機材のコストが割高になり、規模などの発注条件によっては利益が出にくい。
  • 設計と施工の実態が異なり、再設計や契約変更が必要になることが多いなどの指摘がある。
  • 委託業者の確保が心配・困難と想定する地方公共団体が5割以上

4.対策の方向性

(1)メンテナンス元年の取組み

  • 平成25 年の道路法改正により、点検基準の法定化や国による修繕等代行制度の創設等を実施。
  • 平成25 年3月に「社会資本の老朽化対策会議」において「当面講ずべき措置」の工程表をとりまとめ。
  • 同年11 月には「インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議」において「インフラ長寿命化基本計画」これに基づき、国土交通省の「インフラ長寿命化計画(行動計画)」を策定予定。

(2)目指すべき方向性

① メンテナンスサイクルを確定(道路管理者の義務の明確化)
・国民が安心して使い続けられるよう、道路管理者がすべきこと(ルール・基準)を明確化するため、道路法に基づく点検や診断の基準を規定

② メンテナンスサイクルを回す仕組みを構築
・予算、体制、技術を組み合わせ、各道路管理者におけるメンテナンスサイクルを持続的に回す仕組みを構築。あわせて、道路の老朽化や取組みの現状、さらに各道路管理者が維持管理・更新に責任を有すること、必要な予算規模等について国民・利用者の理解と支持が得られるよう努めるべきである。

5.具体的な取組み

  • 橋梁、トンネル等については、国が定める統一的な基準によって、5年に1度、近接目視による全数監視を実施。
  • 舗装、照明柱等構造が比較的単純なものは、経年的な劣化に基づき適切な更新年数を設定し、点検・更新することを検討。
  • 緊急輸送道路上の橋梁や高速道路の跨道橋などの重要度や施設の健全度等から、優先順位を決めて点検を実施。
  • 全国の橋梁等の健全度を把握し比較できるよう、統一的な尺度で、『道路インフラ健診』と呼べる健全度の判定区分を設定し、診断を実施。
  • 損傷の原因、施設に求められる機能、ライフサイクルコスト等を考慮して修繕計画を策定し、計画的に修繕を実施。
  • すぐに措置が必要と診断された施設について、予算や技術的理由から、必要な修繕ができない場合は、通行規制・通行止めを実施。
  • 人口減少、土地利用の変化など、社会構造の変化に伴う橋梁等の利用状況を踏まえ、必要に応じて橋梁等の集約化・撤去を実施。

 

  • 緊急措置が必要と判断されても適切な措置が行われていない場合等は、国が必要な手順を踏んだ上で地方公共団体に対し適切な措置を講じるよう勧告・指示。

  • 直轄国道においては、点検・修繕を的確に実施するため、必要な予算を最優先で確保する。
  • 点検を適正に実施している地方公共団体に対し、重要度や健全度に応じた交付金の重点配分や、複数年にわたり集中的に実施する大規模修繕・更新を支援する補助制度を検討する。
  • 地方公共団体の三つの課題(予算不足・人不足・技術力不足)に対して、以下の支援方策を検討するとともに、都道府県ごとに『道路メンテナンス会議』を設置する。
  • メンテナンス業務は、地域単位での一括発注や複数年契約など、効率的な方式を導入

  • 道路インフラの現状や老朽化対策の必要性に関する国民の理解を促進するため、橋梁等の老朽化の状況、点検・診断結果や措置の実施状況等に関する情報を『道路メンテナンス会議』でとりまとめ。

 

近々にも、都道府県で「道路メンテナンス会議」が立ち上がると思われます。現状の指摘からの文脈では、地方公共団体(都道府県、市町村)にかなりの責務と労力が求められです。

発注形態も工夫がされるようで、道路関係の土木建設業、土木コンサルタント業界にとってもまとまった受注が得られるチャンスかもしれません。

新設の道路ネットワークも重要ですが、ここにきて道路維持管理に関する具体的提言がなされてことは健全な方向と思います。

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